本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

『ハンナ・アーレント 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』矢野久美子 著

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『教育委員会 何が問題か』 新藤宗幸 著

『教育委員会 何が問題か』新藤宗幸 著岩波書店(岩波新書)821円 教育委員会が主体となっている地方教育行政に、自治体の首長がリーダーシップを発揮できるようにする改革の導入が問われている。だが、教育行政へ政治が介入し首長の独善に振りまわされるこ…

『善き書店員』 木村 俊介 著

『善き書店員』 木村 俊介 著ミシマ社1,944円 書店の経営が苦しい、という話が出て久しい。その現場に立つ書店員さん6人へのインタビューを収めたのがこの本だ。職場は大規模チェーン書店から独立書店、立場も店長から非正規社員まで、さまざまな普通の書店…

『話してあげて、戦や王さま、象の話を』マティアス・エナール 著、関口 涼子 訳

『話してあげて、戦や王さま、象の話を』 マティアス・エナール 著 関口 涼子 訳 河出書房新社 1,944円 イタリアのシスティーナ礼拝堂の天井画のなかに描かれた「アダムの創造」。神がアダムに命を吹き込む瞬間、神とアダムが互いに手を伸ばし指先を触れ合わ…

『本屋図鑑』得地直美 / 本屋図鑑編集部 著

『本屋図鑑』 得地直美/本屋図鑑編集部 著 夏葉社 1,836円 町の書店の存続危機が言われ始めて何年もたつ。最近は独立系書店が閉店になっていくのとうらはらに、蔦屋書店など大型書店チェーンの進出が目立つ。 この本は、本と書店を愛する面々、1人で出版社夏…

『緑衣の女』アーナルデュル・インドリダソン 著 / 柳沢 由実子 訳

『緑衣の女』 アーナルデュル・インドリダソン 著 柳沢由実子 訳 東京創元社 1,890円 北欧アイスランド、首都レイキャヴィーク郊外の新興住宅地。子どもが建設現場で拾った石は人の骨だった。こんなショッキングな出だしで物語は始まる。この本はアイスラン…

『アイルランドモノ語り』栩木 伸明 著

『アイルランドモノ語り』 栩木伸明 著 みすず書房 3,780円 アイルランドと言えば、アメリカのケネディ家の父祖の地。少しむかしではジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の映画『静かなる男』で田舎のお人好しな人々があたたかく描かれ、現在では民…

『本の未来』 富田倫生 著

『本の未来』 富田倫生 著 BinB store 無料 電子書籍が華々しく宣伝されているが、肝心の書籍の中身、紙の本から文章をパソコンや電子書籍リーダーに読み込めるようにしたテキストデータがまだ少ない。 青空文庫は著作権が切れたり著者の許諾を得た本をテキ…

『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』 宮田 昇 著

『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』宮田 昇 著みすず書房2,310円 退職後、若いころ味わった読書の楽しみを思い出し、近所の図書館に通うようになった年配者は多い。この本の著者、宮田昇氏もその一人だ。だが宮田氏はただの読書好きではない。編集…

『はだしのゲン』、松江市小中学校図書室で閲覧制限・児童生徒への貸出禁止の件について

松江市教育委員会が『はだしのゲン』を市内の全小中学校へ学校図書室で閲覧制限したのみならず貸出禁止を求め、全校がそれに応じた、と? 表現の自由、出版の自由、思想の自由を妨げる検閲だ。教育委員会とは、「教育」が名ばかりの上だけを見ている役人たち…

『歴史が後ずさりするとき 熱い戦争とメディア』ウンベルト・エーコ 著、リッカルド・アマデイ 訳

『歴史が後ずさりするとき 熱い戦争とメディア』ウンベルト・エーコ 著リッカルド・アマデイ 訳岩波書店 3,045円 哲学者、中世研究者および著書『薔薇の名前』で有名な小説家でもあるウンベルト・エーコ。この本は彼が2000年から2005年にイタリアの雑誌に連…

『書店の棚 本の気配』 佐野 衛

『書店の棚 本の気配』 佐野 衛亜紀書房 1,680円 書店に入る。目にとまった本を開いて、数行読む。頭のなかに文章が描写する風景、人物、理論が起ちあがる。本から目を離して、棚の、その本のあったあたりを見渡す。たくさんの本のタイトルが頭のなかでつな…

『死と滅亡のパンセ』 辺見 庸 著

『死と滅亡のパンセ』 辺見 庸 著毎日新聞社1,365円 東日本大震災のあと、ジャーナリストで小説家、詩人でもある辺見庸氏は、故郷の宮城県石巻市に立ちつくした。手に取るようによく知っていた町がなにもない。友人たちはどうなったのか。瓦礫の中に、墓から…

『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』 デヴィッド・ハジュー 著 / 小野 耕世 / 中山 ゆかり 訳

『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』デヴィッド・ハジュー 著小野 耕世 / 中山 ゆかり 訳岩波書店5,040円 今、アメリカの映画ではバットマンなどアメリカンコミックから生まれたヒーローが活躍している。キッチュだけどかっこいいヒ…

『東アジアの記憶の場』板垣 竜太 / 鄭 智泳 / 岩崎 稔 編著

『東アジアの記憶の場』板垣 竜太 / 鄭 智泳 / 岩崎 稔 編著河出書房新社4,410円 東アジアの国々、日本、韓国、北朝鮮、中国、台湾は古代から現在まで互いに影響しあい、交戦し、文化を交流してきた。この本では、国の歴史で扱えない東アジアで共有する文化…

『「本屋」は死なない』石橋毅史 著

『「本屋」は死なない』石橋毅史 著新潮社1,785円 「情熱を捨てられずに始める小さな本屋。それが全国に千店できたら、世の中は変わる。」 これが、書店ひぐらし文庫店主、原田真弓が開店にあたって抱いた思いだった。渋谷にある大手書店の売り場担当を辞め…

『いまファンタジーにできること』アーシュラ・K・ル=グウィン 著、谷垣 暁美 訳

『いまファンタジーにできること』アーシュラ・K・ル=グウィン 著谷垣 暁美 訳河出書房新社2,100円 現在ファンタジーと呼ばれる物語は、かつては神話や昔話であり誰もが聞いて育ったものだった。そこから小説が生まれたのだが、近代、小説は現実の人間を描…

エライ人にはわからんらしい

佐賀県武雄市の図書館が、指定管理者をTSUTAYAが運営する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」にして、市民の希望に応えて365日9時 から21時まで開館し、蔵書を20万冊増やし本を手にとって見てもらえるようにするとのこと。お店と図書館の複合施設という…

『越境する書物 変容する読書環境のなかで』 和田 敦彦 著

『越境する書物 変容する読書環境のなかで』和田 敦彦 著新曜社 4,515円 そこに本がある、というのはどういうことだろうか。その本はいつ、誰によって、どうやってもたらされたのか。本がある、ということは、購入する理由があり、資金の流れがあり、書物を…

『北の島 グリーンランド / 南の島 カピンガマランギ』長倉 洋海 著

<!-- /* Font Definitions */ @font-face {font-family:"MS 明朝"; panose-1:2 2 6 9 4 2 5 8 3 4; mso-font-charset:78; mso-generic-font-family:auto; mso-font-pitch:variable; mso-font-signature:1 0 16778247…

『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』ダグラス・アダムス / マーク・カーワディン 著、安原 和見 訳

『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』ダグラス・アダムス / マーク・カーワディン 著安原 和見 訳みすず書房3,150円 「絶滅危惧種をとりまく状況は最初から、身もふたもなく絶望的」。 銀河をヒッチハイクしてまわる異星人と最後の地球人の…

『乾燥標本収蔵1号室 大英自然史博物館 迷宮への招待』リチャード・フォーティ 著、渡辺 政隆/野中 香方子 訳

『乾燥標本収蔵1号室 大英自然史博物館 迷宮への招待』リチャード・フォーティ 著渡辺 政隆 / 野中 香方子 訳NHK出版2,625円 自然史博物館に行ったことがある人は多くても、その裏側へ入った人は少ないだろう。そこは迷宮で、たくさんの謎の物体と、それを…

『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス 著、安原 和見 訳

『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス 著、安原 和見 訳河出書房新社 683円 「星図にも載っていない辺鄙な宙域のはるか奥地、銀河の西の渦状腕の地味な端っこに、なんのへんてつもない小さな黄色い太陽がある。この太陽のまわりを、 だいたい1億5…

『王のパティシエ ストレールが語るお菓子の歴史』ピエール・リエナール/フランソワ・デュトワ/クレール・オーゲル 著、大森由紀子 監修、塩谷祐人 訳

『王のパティシエ ストレールが語るお菓子の歴史』ピエール・リエナール/フランソワ・デュトワ/クレール・オーゲル 著大森由紀子 監修、塩谷祐人 訳 白水社 2,310円 美食家というのは、おいしいものを食べて育った人が多いような気がする。この本の語り手…

『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』津野 海太郎 著

『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』津野 海太郎 著国書刊行会1,890円 今の子どもや若者は本を読まなくなった、という。たいがいの町には書店も図書館もある。インターネットで注文することもできる。だが出版社や書店の売り上げは下がり続け…

『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』サーシャ・スタニシチ 著、浅井 晶子 訳

『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』サーシャ・スタニシチ 著浅井 晶子 訳白水社2,835円 1991年から2000年まで続いたのユーゴスラヴィア紛争。そのなかのボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争。著者、サーシャ・スタニシチは当時ボスニア・ヘルツェゴヴ…

『エル・ネグロと僕 剥製にされたある男の物語』フランク・ヴェスターマン 著、下村 由一 訳

『エル・ネグロと僕 剥製にされたある男の物語』フランク・ヴェスターマン 著下村 由一 訳大月書店2,520円 オランダのフリージャーナリスト、フランク・ヴェスターマンは1983年当時大学生。スペインを旅行していた。が、カタロニア地方の博物館であるものを…

『バウドリーノ』上・下、ウンベルト・エーコ 著、堤 康徳 訳

『バウドリーノ』上・下ウンベルト・エーコ 著堤 康徳 訳岩波書店各巻1,995円 小説『薔薇の名前』で世に名を知らしめた記号学者、小説家ウンベルト・エーコの邦訳最新小説。中世ヨーロッパを舞台に史実と幻想が踊る冒険物語。かんたんに言ってしまえばホラ話…

アーシュラ・K・ル=グィンさんからのメッセージ

アメリカの作家、偉大なる「西の善き魔女」アーシュラ・K・ル=グィンさんが、『なつかしく謎めいて』、『ギフト』『ヴォイス』『パワー』(『西のはての年代記3部作』)、『ラウィーニア』の日本語訳者、谷垣暁美さんのお願いに応えて、「日本の読者へのメ…

『私のフォト・ジャーナリズム 戦争から人間へ』長倉洋海 著

『私のフォト・ジャーナリズム 戦争から人間へ』 長倉洋海 著 平凡社 945円 フォト・ジャーナリスト長倉洋海氏の写真は人々の笑顔であふれている。世界各国の戦火や貧困に苦しむ人々も笑顔なのだ。なぜ長倉氏は苦しんでいる人の笑顔を撮ることができるのか…