長倉洋海著
1,890円
長年、アフガニスタンを撮り続けてきた写真家、長倉洋海氏が山の学校の子どもたちに出会ったのは2002年のことだった。アフガニスタン北部のパンシール、長倉氏の敬愛する北部同盟の指導者マスードの故郷。訪れたのは、彼の死の翌年だった。
アフガニスタンにはめずらしい男女共学の学校。地元の人たちが建てた石造りの校舎。だが窓ガラスも扉もなく、子どもたちは地面にはいつくばってノートをとっていた。長倉氏は、翌年からこの学校の支援活動を始めた。マスードの夢の一端を担うかのごとく。
この本にあふれるのは、山の学校の子どもたちの笑顔、笑顔。生まれたときから戦争に囲まれて、平和な時代をあまり知らない子どもたちの笑顔。笑いさざめきながらの通学。授業中の真剣な瞳。休み時間のサッカー。寄り道しながらの楽しい帰り道。
さらに子どもたちは家の手伝いをしなければならない。羊追い、子守。そして家族みんなでの楽しい夕餉。お客さんを招いての晩餐。
しかし子どもたちの父親48人が亡くなっているのだ。アフガニスタンは全て平和になったわけではない。ある子は、隣の家に隠してあった爆薬が爆発して死に、門番のおじさんは地雷を踏んで片足となった。医療の後れも深刻だ。
なにより、全ての子どもたちが学校に来ることができるわけではなく、来ている子どもたちも毎日来ることができるわけではない。家で人手がたりない。遠くの町に働きに行かなければならない。
さまざまな事情を抱えながら、一生懸命に翼を広げて飛び立とうとしている子どもたち。それを長倉氏は子どもたちの視線から温かく見守っている。
(掲載:『望星』2007年1月号、東海教育研究所)