
『
デジグラフィ―デジタルは写真を殺すのか?
』
飯沢耕太郎著
中央公論新社
1,575円
最近は、カメラと言えば当然のように
デジタルカメラのことだ。だが、光によって画像をフイルムに焼き付けるアナログカメラの写真と、電気信号によってデジタルデータとして保存される
デジタルカメラの写真とは、できあがりこそ似ていても、中身はまったく違う。
著者の写真評論家、
飯沢耕太郎はアナログカメラの写真=フォトグラフィに対し、
デジタルカメラの写真を「デジグラフィ」と呼び、この本でデジグラフィの現在を通して、フォトグラフィ、デジグラフィの未来を考える。
報道写真では、
デジタルカメラを使うことによって、画像を新聞社や通信社にすぐに多量に送信し、より早く公開できるようになった。しかし、デジタル写真はアナログ写真よりも簡単に加工できる。2003年、『ロサンゼルス・タイムズ』紙に載った
イラク戦争の写真で、イギリス軍の兵士が住民に避難を呼びかけている場面を撮した写真があった。だが、実は2枚の写真を合成したものだった。
しかし簡単に加工できるということは、デジグラフィの利点だ。
デジタルカメラで撮影され加工された写真が、アートとして発表されている。
魔術的リアリズムを醸し出す作品たち。また最大の利点は、簡単にウェブにのせられることだ。日常をアートとしてホームページにのせた写真の数々。デジタルアーティストの活躍は、ますます広がっている。
だがデジタル写真は、アナログカメラで撮ったモノクロ写真の、白から黒へのけむるように美しいグラデーションには、とうていかなわない。
高級
デジタル一眼レフカメラがバカ売れしている、携帯電話のカメラを友達とやりとりし日々のブログに貼り付ける、デジタル画像を普通の人が操れるようになった、現在。フォトグラフィとデジグラフィは絵画と写真のように別な道をたどるのか。フォトグラフィは、絵画のように生き残ることができるか。
生き残って欲しい。
(掲載:『望星』2004年7月号、東海教育研究所より加筆)