
『
琉球布紀行』
澤地久枝著
新潮社
2,310円(絶版)

『
琉球布紀行 (新潮文庫)
』
澤地久枝著
740円
沖縄島を中心として広がる鹿児島県
下の島々から台湾近くの島々は、
琉球弧と呼ばれる。本土とは違った文化を持つ。この島々にはまた独自の織り、染め、模様の布がいくつも昔から受けつがれている。
昭和史を描いてきたノンフィクション作家、
澤地久枝は2年あまり沖縄に住み、布の作り手たちを訪ね歩き、取材した。沖縄にやってきたのは、もともとは沖縄の戦後史を学ぼうと大学で聴講するのが目的だったという。しかしこれらの布に魅せられ、島から島へ旅することなった。この本は、月刊誌『シンラ』に1999年の1年間連載したものをもとに新たに書きおろしたもの。
北は鹿児島県の
奄美大島から南は台湾のとなりの
与那国島までの、さまざまな伝統の布とその作り手がカラー写真入りで紹介される。華麗な絵柄の紅型、精緻な模様の紬や絣。
芭蕉の繊維から織った布もある。これらの布は、本土からの布製品の
流入や先の戦争による物資不足などにより消滅の危機にさらされてきた。なかには作る技術が長いこと失われていたものもあった。この危機を乗り越えて伝統を守り、また失われた技術をよみがえらせたのが紹介されている作り手たちだ。多くは女性。著者は布たちがくぐった戦火をたどり、作り手たちの上を通過した戦争にふれる。作り手たちは戦火で破壊された自分たちの生活を立て直すなか、布の伝統も立て直し、さらに自分の作品として発展させた。そして伝統を受けつぐ後継者を育てている。
布を訪ねての著者の旅は、作り手たちの人生を訪ねる旅だった。作り手たちの強い人生。ものを作る人が一番強い。
(掲載:『望星』東海教育研究所)