本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

『古本屋を怒らせる方法』林 哲夫著

41ecu5ruaul_sl500_aa240_古本屋を怒らせる方法』 林 哲夫著 白水社 2,100円  趣味が「古本探し」「古本屋めぐり」というと本好き上級といったところだろう。だが、さらなるつわものの古本好きは古本屋をまわって本を探すだけではない。古本屋から蔵書目録を取り寄せ、各地の古本市で目をこらし、掘り出し物を探すのだ。  著者、林哲夫は画家で本の装丁も手がける。一方、無類の古本好きで、古本関連の同人誌『SUMUS』を編集している。この本はそんな彼の古本の日々を集めたエッセイ。  古本屋のヘンクツおやじにコケにされる叱られるは日常茶飯事。店の真ん中に置いてある本を触ろうとしたら「触ったらアカン! 売りもんとちゃう」シッシ、とやられたこともある。未整理の本に触るのは嫌われるのだ。また、買った本を返品するのも嫌われる。何度も同じ店の品を返品して、店から「二度と注文しないでください。あなたには売りません」と絶交状を送り付けられた人もいる。古本屋でのマナーは、まず傘、コートはたたんで入る、ショルダーバッグは肩から外す、風邪をひいているときには行かない、などなど。最も嫌われるのが次々に本を抜き出して値段だけを確認することだそうだ。  さて、古本屋や古本市をめぐっていると、古本好きの友人も増える。なかには「ゴッドハンド」神の手を持つ人、すなわち掘り出し物の本をつかむ確立が高い人もいる。その秘訣は「よく歩くこと」。まめに古本屋や古本市を覗くために歩きまわることらしい。神の手ならぬ、神の足を持つ人か。  つわもの古本好きは自分にとって貴重な本を見つけるために日夜目を光らせているのだ。数百円の本を見つけて喜び、数万の値のつく本をなんとか安く手に入れようと算段する。大人の愉しみだ。 (掲載:『望星』2008年5月号、東海教育研究所)