本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

アーシュラ・K・ル=グィンさんからのメッセージ

 アメリカの作家、偉大なる「西の善き魔女」アーシュラ・K・ル=グィンさんが、『なつかしく謎めいて』、『ギフト』『ヴォイス』『パワー』(『西のはての年代記3部作』)、『ラウィーニア』の日本語訳者、谷垣暁美さんのお願いに応えて、「日本の読者へのメッセージ」を公式サイトに掲載しました。

To my Readers in Japan

I wrote my translator-friend Akemi Tanagaki in Tokyo a brief email note. She answered,

    “Thank you for your concern.
   I’m all right and my family is all right.
  Only we feel so sad, helpless and worried.”

And she asked if I would put a brief and simple message on my site for my readers in Japan — “but I know that it is very difficult to find words with which to talk to those suffering very much.”

Yes, dear Akemi, it is difficult, it is impossible. But I am honored by your asking me to try.

To My Japanese Readers:

There is an ocean between us, yet that ocean joins us.

The great tsunami that struck Japan travelled on, growing weaker, until it came to the west coast of America. Here it did little harm. But with that wave came to us the great wave of your grief and suffering.

I hope you know that there are many, many people here who are thinking of you now, and crying for you, and praying that the worst will soon be past.

I admire, more than I can say, the quiet courage the ordinary people of Japan have shown amidst so much loss, suffering, and fear. Your strong and patient faces are beautiful to see. I look at them and cry. I wish you strength and the hope of better days.

With love,
Ursula
14 March 2011

http://www.ursulakleguin.com/Blog2011.html#ReadersInJapan

The official web site of author Ursula K. Le Guinhttp://www.ursulakleguin.com/


さかなさんのブログ"1day1book"に、谷垣暁美さんによる日本語訳が掲載されていますので引用させていただきました。


 わたしの翻訳者で友人のアケミ・タニガキ(東京在住)に短いメールを送った。返ってきたメールはこういう書き出しだった。

「心配してくださってありがとう。
わたしは大丈夫で、家族もみな、大丈夫です。
だけど、とても悲しくて、無力感と心配でいっぱいです」

 そして、そのメールには、日本のあなたの読者にあてた簡単で短いメッセージを公式サイトに載せてもらえないか、と書いてあった――「非常につらい目にあっている人たちにかける言葉を見つけるのが、とても難しいのは、よくわかっていますけれども」
 そのとおりです、アケミさん。それは難しい。不可能だと言っていいぐらい。でも、せっかく頼んでくれたのだから、がんばってやってみます。

 日本の読者の皆さんへ

 わたしたちとあなたがたの間には海があります。でも、その海で、わたしたちとあなたがたはつながっています。

 日本を襲った大津波は海を旅しながら、だんだん弱くなり、アメリカの西海岸に達しました。それはここではほとんど害をなしませんでした。けれども、あなたがたの悲しみと苦しみが大きな波となって、その小さな波とともに、わたしたちに届きました。

 こちらではたくさんの、とてもたくさんの人が今、あなたがたのことを考え、あなたがたのために泣き、最悪の時が早く過ぎ去るように祈っています。そのことをどうか知っていてください。

 このように大きな喪失の悲しみ、苦しみ、不安のさなかで、日本のごくふつうの人々が示す静かな勇気に、わたしは言葉にできないほどの賞讃をおぼえます。あなたがたのしっかりとした、忍耐強い顔を見ると、その美しさに打たれます。ひとりひとりの顔に目を向けると泣けてきます。あなたがたに力がみなぎり、よりよい明日への希望を胸に抱けるよう願っています。

愛をこめて
アーシュラ
2011年3月14日
(翻訳:谷垣暁美)

http://r2fish.cocolog-nifty.com/1day1book/2011/03/post-d47e.html
さかなさんのブログ"1day1book" http://r2fish.cocolog-nifty.com/1day1book/