本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ沢渡 曜の書評ブログ

図書館法における司書の存在の耐えられない軽さ

 図書館法では司書の図書館における立場があいまいである。

図書館法
昭和25(1950)年4月30日法律第108号
最終改正:平成23(2011)年12月14日法律第122号

法律の目的は下記の通り。

第1条  この法律は、社会教育法(昭和24年法律第207号)の精神に基き、図書設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。

図書館法では、図書館をこう定義する。

第2条  この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室 を除く。)をいう。
2  前項の図書館のうち、地方公共団体の設置する図書館を公立図書館といい、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人の設置する図書館を私立図書館という。

日本図書館協会は、こう書いている。

自治体が設置する「公立図書館」と、法人等が設置する「私立図書館」を総称して「公共図書館」と呼んでいます。
日本図書館協会HP「図書館について」

図書館法における図書館とは公立図書館と私立図書館を総称して一般に言われている公共図書館学校図書館大学図書館は含まない。法律では学校図書館学校図書館法大学図書館大学設置基準で定められている。

図書館奉仕、つまり図書館の仕事における図書館職員の役割についてはこう書いてある。

第3条 3 図書館の職員が図書館資料について十分な知識を持ち、その利用のための相談に応ずるようにすること。

司書と司書補については

第4条  図書館に置かれる専門的職員を司書及び司書補と称する。
2 司書は、図書館の専門的事務に従事する。
3 司書補は、司書の職務を助ける。

第5条には司書と司書補の資格をもつ者について、資格取得の条件と方法をあげている。

第5条  次の各号のいずれかに該当する者は、司書となる資格を有する(長いのでリンク先参照)。

司書と司書補の研修についても定めてある。

第7条  文部科学大臣及び都道府県の教育委員会は、司書及び司書補に対し、その資質の向上のために必要な研修を行うよう努めるものとする。

一方、図書館職員の配置については「第2章 公立図書館」第13条にある。図書館法では、私立図書館の職員についての規定がない。

第13条  公立図書館に館長並びに当該図書館を設置する地方公共団体教育委員会が必要と認める専門的職員、事務職員及び技術職員を置く。

 「専門的職員」は司書なのか。どのような資格や技術をもつ者なのかは書かれていない。専門的職員を司書とみなすこともできるが、確としたところはわからない。自治体では図書館設置条例や管理運営についての規則でこれを定めている。だがその内容、正規職員の司書を図書館専任職員とするかどうか、図書館業務を担当する職員は司書資格所持者とするか、どのような雇用条件とするか、は自治体によってまちまちになっている。図書館運営業者への業務委託や指定管理の場合は、その業者の雇用条件となる。

 つまり、司書の立場は雇われる先によって違うのだ。非正規司書の契約更新回数も自治体によってまちまち。また、自治体が図書館を直営から指定管理にすることで、正規司書なら異動、非正規司書なら契約終了になる。指定管理運営の図書館の司書なら、指定管理業者が管理期間終了で入札に外れた場合、職場が変わるか仕事がなくなるか、となってしまう。

 かくて非正規司書には、契約終了に怯えつつ長年同じ職場で働く司書もいれば、いろいろな図書館を渡り歩く「渡り司書」というか「流しの司書」「野良司書」もいるのだ。