本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

『私たちは〝99%〟だ ドキュメント ウォール街を占拠せよ』『オキュパイ! ガセット』編集部 編、『オキュパイ! ガセット』編集部 編  肥田 美佐子 訳 / 湯浅 誠 解説

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私たちは〝99%〟だ ドキュメント ウォール街を占拠せよ
『オキュパイ! ガセット』編集部 編 
肥田 美佐子 訳 / 湯浅 誠 解説
岩波書店 2,160円

 だれもが、幸せになりたい、と思っている。クビになる心配のない安定した給料がでる職場と、給料で充分確保できる居心地のいい住まいはもちろん必要だ。ほか、高すぎない学費、病気のときの援助、老後の支えなども欠かせない。だが、このなかのすべてを確実に得ることができる人がどれだけいるのか。

 アメリカには、経済的に恵まれない99%の人々と、資産が増加し続けている1%の富裕層がいるという。2011年の「ウォール街を占拠せよ」運動に参加した人々は「私たちは99%だ」と叫ぶ。この本は人々の訴えや運動の記録をまとめたものだ。彼らは民主主義と富の平等を求めてデモ行進を繰り返した。警官隊と衝突し負傷者もでた。だが運動はワシントンD・C、フィラデルフィア、シカゴ、シアトルなど全米各地の大都市にも広がっていった。言語学者ノーム・チョムスキー、映画監督マイケル・ムーア、哲学者スラヴォイ・ジジェクなど著名人も応援した。運動参加者はウォール街近くのズコッティ公園を本拠地として寝泊りし、そこでは公共のマナーを守るようにルールが作られ、清掃や洗濯も共同で行われた。本を持ち寄った野外図書館まで作られた。

 だが、人々は人種も職業も多様だった。ルールが破られることもあった。周辺の住民から騒音への苦情も相次いだ。しかし、Twitterによると小規模にはなったが現在も運動は続いているようだ。

 この本にスラヴォイ・ジジェクがこんな文をよせている。極端に不公平な社会ができたのは、社会のシステムそのものがとっくに自壊していたからだ、民主主義と資本主義の結婚は終焉を迎えた、かといって共産主義はとっくに破綻している、変革はなされうるのだ、と。

 このことは日本でも同じだ。未来を変えるために変革を。

(掲載:『望星』2013年2月号、東海教育研究所)