本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

『本屋会議』本屋会議編集部 編

9784904816134b1l

本屋会議
本屋会議編集部 編
夏葉社
 1,836円
 
 本は米や魚や肉や薬と違って生活必需品ではない。確かに本が好きで読むことが好きで、本がないと死んでしまう、と言う人はいる。だが常に少数派だ。教科書や参考書のような勉強道具としての本を除くと、多くの人にとって本は暇なときの愉しみの道具だ。別の愉しみがあれば本がなくてもかまわない。今のような、趣味やファッションの情報は雑誌で見るのではなくインターネットで見る時代では。

 町の本屋さん、つまり商店街にある小規模な書店が、日本中でどんどんつぶれている。書店のない地域もある。

 この本『本屋会議』は、2013年に『本屋図鑑』を作った出版社の夏葉社代表、島田潤一郎氏と編集者でライターの空犬太郎氏、そして東京の往来堂書店店長の笈入建志氏が書いた。

 2014年の1月、島田氏と笈入氏を発起人として、「町には本屋さんが必要です会議」という公開会議がはじまった。全国の本屋さんを主な舞台にさまざまな書店員さんをゲストに招いて「本屋さんのいま」について話し合われた。これまで売れていたものが売れなくなっている。特に雑誌。雑誌を立ち読みする子どもたちがいなくなった。代わりに、子どもたちはスマホや携帯を見ている。

 町に本屋さんが必要な理由はなんだろう。それは、子どもから、地元の本屋さんの本棚の前に立ち、どの本を手に入れようかな、と、わくわくする機会がなくなってしまう、ということ。島田氏いわく、「本屋さんを必要としている人は子どものころから本屋さんを必要としていたからこそ、本屋さんが必要であるともいえる。」町の本屋さんが地域で踏んばらねば、本も読者も消えてしまう。個性的な本屋さんでなくていい。ふつうの町の本屋さんが必要なのだ。

 最終章、本好き中学生が物置同然だった学校図書館を立て直した奮闘記に救われる。

(掲載:『望星』2015年8月号、東海教育研究所)