書籍・雑誌
『本が語ること、語らせること』青木海青子 著夕書房 奈良県東吉野村の林に囲まれた古民家に「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」はある。閲覧席は座敷。座敷や庭で講演会やイベントを催すことも。大工さんが木の作った書架に本が収まっている。司書の青木海…
『亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 著奈倉有里 訳岩波書店 タイトルの『亜鉛の少年たち』の亜鉛とは、ソ連軍が戦死者を亜鉛製の棺に入れて家族の元に送ったことから。 ソ連は1979年、アフガニスタンの社会…
『手づくりのアジール 「土着の知」が生まれるところ』青木新兵 著晶文社 民主主義国家なら、人が皆、心身ともに健康に生きられるのが「ふつう」だ。だが、このところ皆が「ふつう」に生きるのはむずかしくなっている。「ふつう」というのは厳しい条件をくぐ…
『カカ・ムラド ナカムラのおじさん』ガラフラ 原作 さだまさし、他 訳・文双葉社 2019年12月、アフガニスタンで長年に渡って住民に尽くし敬愛されてきた医師・中村哲氏が、現地東部の都市ジャララバードでスタッフとともに何者かに殺害された。アフガニスタ…
『宿借りの星』酉島 伝法 著東京創元社 SF小説の楽しさは、舞台はどんな世界で、主人公はどんな存在か、読み進むごとにわかってくることだ。むろん、主人公は人間でなくてもいい。 「頭の奥まで霞んでいるようだった。」と言う、ひとり語りから物語は始まる…
『蛾のおっさんと知る衝撃の学校図書館格差 公教育の実状をのぞいてみませんか?』山本 みづほ 著郵研社 大昔のまま、いつも扉に鍵がかかっている学校図書館がある。一方で非常に少ないが、毎日、担当の教職員がおり、授業を行う学校図書館もある。このよう…
『書店と民主主義 言論のアリーナのために』福嶋 聡 著人文書院 2015年、ジュンク堂書店渋谷店はブックフェア「自由と民主主義のための必読書50」を開催した。だが選んだ50冊のなかにSEALsの本がある、従業員の私的なツイートの内容が疑わしい、などのことか…
『本屋がアジアをつなぐ 自由を支える者たち』石橋毅史 著ころから 「真理がわれらを自由にする」。この言葉が国立国会図書館のホールに刻まれている。戦後、民主主義のための図書館をつくるために掲げられた理念だ。 「本屋」たちもその理念を抱いている。…
『さよなら未来 エディターズ・クロニクル2010ー2017』若林 恵 著岩波書店 21世紀になって、20世紀に構想されていた技術はある程度実現した。今は20世紀に考えられていた未来の域をまだ出ていない。そろそろ未来という言葉が陳腐に聞こえてきた。 雑誌「WIRED…
『タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源』ピーター・ゴドフリー=スミス 著夏目 大 訳みすず書房 3,240円 タコには心臓が3つ。血は青緑色。自在に体色を変えて周囲に溶け込む。賢い生き物らしい。水槽のから脱走した、という話がよくある。骨がないので…
『本を贈る』 若松 英輔/島田 潤一郎/牟田 都子/矢萩 多聞/橋本 亮二/笠井 瑠美子/川人 寧幸/藤原 隆充/三田 修平/久禮 亮太 著 三輪舎 始めに言葉ありき。本は作者の言葉を載せるためにある。画集や写真集なら作品を載せるために。そのために最高の形に作ら…
『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』内村 洋子 著方丈社 イタリアで暮らすジャーナリストでエッセイストの内村洋子さん。ある日、水の都ヴェネツィアで貫禄を漂わせた古書店に目をとめた。扱うのはすべてヴェネツィア関連の本。歴史、文芸、経済…
『16歳の語り部』語り部:雁部那由多 / 津田穂乃果 / 相澤朱音案内役:佐藤敏郎ポプラ社 2011年3月11日の東日本大震災の当時、雁部那由多くん、津田穂乃果さん、相澤朱音さんは宮城県東松島市の小学5年生だった。被災してクラスメイトを失い、避難生活を体験…
『シリアの秘密図書館瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々』デルフィーヌ・ミヌーイ 著藤田 真利子 訳東京創元社 シリア内戦はまだ続いている。 ISの脅威は小さくなったものの、アサド大統領のシリア政府、ロシア、アメリカ、トルコ、クルド人勢力ほか…
『図書館大戦争』ミハイル・エリザーロフ 著北川和美 訳河出書房新社、3,024円 本には人を夢に誘う力がある。そんな本の魔力を、国の激変に翻弄され打ちのめされた、社会の底辺にいる人々が求めたら…。 小説『図書館大戦争』。日本で人気の小説とそっくりの…
『戦争と読書 水木しげる出征前手記』水木しげる / 荒俣 宏 著KADOKAWA(角川新書)、864円 去年11月に逝去した漫画家水木しげる氏は『ゲゲゲの鬼太郎』など妖怪マンガの大家としておなじみだが、一方『総員玉砕せよ!』などで先の大戦での自分の従軍体験を描…
『“ひとり出版社”という働きかた』西山雅子 編河出書房新社、1,836円 本屋に行っても読みたい本がない、つまらない、とお嘆きの方もいるかもしれない。本の売り上げが落ちているなか、出版社は、確実によりたくさんの人に売れる企画を取り上げて本を作らざる…
『声』アーナルデュル・インドリダソン 著柳沢由美子 訳東京創元社2,052円 アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンのレイキャヴィーク警察犯罪捜査官エーレンデュル・シリーズ邦訳第3作。未訳の作品を含めると第5作めになる。犯罪ミステリ小説と…
『凍える墓』ハンナ・ケント 著加藤陽子 訳集英社(集英社文庫)1,015円 「幸福な国」と知られているアイスランド。男女平等指数は世界第1位だ。 この本は1830年にアイスランドで最後に死刑となったひとり、アグネス・マグノスドウティルという女性の記録を…
『海の本屋のはなし 海文堂書店の記憶と記録』平野義昌 著苦楽堂 2,052円 2013年9月30日、神戸市にある老舗書店、海文堂書店が閉店した。99年間、地元で信頼され愛された。地元の同人誌や古書店も応援していた。全国にも海事専門書が豊富にあることで知られ…
『本屋会議』本屋会議編集部 編夏葉社 1,836円 本は米や魚や肉や薬と違って生活必需品ではない。確かに本が好きで読むことが好きで、本がないと死んでしまう、と言う人はいる。だが常に少数派だ。教科書や参考書のような勉強道具としての本を除くと、多くの…
『私たちは〝99%〟だ ドキュメント ウォール街を占拠せよ』『オキュパイ! ガセット』編集部 編 肥田 美佐子 訳 / 湯浅 誠 解説岩波書店 2,160円 だれもが、幸せになりたい、と思っている。クビになる心配のない安定した給料がでる職場と、給料で充分確保で…
『誰だ ハックにいちゃもんつけるのは』ナット・ヘントフ 著 / 坂崎麻子 訳集英社(集英社文庫コバルト・シリーズ)、1986 現代の図書館は民主主義における人間の重要な権利〈表現の自由〉と〈知る権利〉の現れとしてつくられたものだ。この本『誰だ ハック…
『華氏451度〔新訳版〕』レイ・ブラッドベリ 著伊藤典夫 訳早川書房(ハヤカワ文庫SF)929円 『華氏451度』。アメリカ文学の幻想の魔術師レイ・ブラッドベリの代表作にして、現代社会に警鐘を鳴らす問題作。旧訳版より読みやすくなっている。 華氏451度は紙…
『本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る』 伊勢﨑賢治 著朝日出版社1,700円 伊勢﨑賢治氏は国連PKO活動に参加し東ティモール・シエラレオネ・アフガニスタンの武装解除を手がけてきた自称「紛争屋」。現在、大学で各国の学生に「平和と紛争」学…
『鹿の王 上 生き残った者 / 鹿の王 下 還っていく者』上橋 菜穂子 著KADOKAWA 上下 各1,728円 『精霊の守り人』に始まる『守り人』シリーズ、『獣の奏者』など、児童書の枠に収まりきらないハイ・ファンタジーを書き、優れた子どもの本の作家に贈…
『図書室の魔法』上・下ジョー・ウォルトン 著 / 茂木 健 訳東京創元社(創元SF文庫) 上下巻 各929円 物語は人を自由にする。物語を読むことは自由になること。耐えられない現実の中でも本を読んでいる間は自由なのだ。 この本の舞台は1979年のイギリス。語り…
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『教育委員会 何が問題か』新藤宗幸 著岩波書店(岩波新書)821円 教育委員会が主体となっている地方教育行政に、自治体の首長がリーダーシップを発揮できるようにする改革の導入が問われている。だが、教育行政へ政治が介入し首長の独善に振りまわされるこ…
『善き書店員』 木村 俊介 著ミシマ社1,944円 書店の経営が苦しい、という話が出て久しい。その現場に立つ書店員さん6人へのインタビューを収めたのがこの本だ。職場は大規模チェーン書店から独立書店、立場も店長から非正規社員まで、さまざまな普通の書店…