本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

2009-01-01から1年間の記事一覧

『書肆ユリイカの本』田中 栞著

『書肆ユリイカの本』 田中 栞著 青土社 2,520円 西洋には本の装丁を凝って美しく作る伝統がある。日本の出版社、書肆ユリイカの作った本は、装丁の美しさで一世を風靡した。編集者、伊達得夫が興した1947年から彼が没した1961年までのわずか14年の間に、数…

本は自由に読めばいい

最近、子どもに読書が奨励されている。朝の10分間読書など、授業前に本を読ませる。自分で選んだ本でいい。そうすると静かに授業に入れるそうだ。私だったらたった10分しか本を読めないで続きは明日、なんて冗談じゃない。授業中でも読んでしまうだろう。国…

『ラウィーニア』アーシュラ・K・ル=グウィン著、谷垣暁美訳

『ラウィーニア』 アーシュラ・K・ル=グウィン著 谷垣暁美訳 河出書房新社、2,310円 ローマ以前の遠い過去のイタリア。ラティウムの王女ラウィーニアは一族の聖地で、はるか未来の詩人ウェルギリウスの幻影と出会う。ウェルギリウスは告げる。遠いトロイア…

『子どもたちに語るヨーロッパ史』ジャック・ル・ゴフ著、前田耕作監訳、川崎万里訳

『子どもたちに語るヨーロッパ史 (ちくま学芸文庫)』 ジャック・ル・ゴフ著 前田耕作監訳、川崎万里訳 筑摩書房、1,155円 ジャック・ル・ゴフはフランスの歴史の大家。社会学、経済学、人類学などの考えを取り入れ時代の民衆の心にせまる歴史研究をめざすア…

『かくして冥王星は降格された 太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて』ニール・ドグラース・タイソン著、吉田三千世訳

『かくして冥王星は降格された―太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて』 ニール・ドグラース・タイソン著 吉田三千世訳 早川書房 2,100円 最初に学校で習ったとき、太陽系は、太陽と月と9つの惑星「水金地火木土天海冥」だった。ところが2006年8月、国際天…

『第七官界彷徨』尾崎 翠著

『第七官界彷徨 (河出文庫)』 尾崎 翠著 河出書房新社 651円 尾崎翠(おさきみどり)は長い間、忘れられた作家だった。1970年代から見直され、全集や選集が発行された。今回、代表作『第七官界彷徨』が初めて一本立てで文庫化された。 尾崎翠とは誰か。1896…

『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界 ムーミントロールの誕生』冨原眞弓著

『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界―ムーミントロールの誕生』 冨原眞弓著 青土社 3,990円 ムーミンはカバではないことは、もう誰しもおわかりだろう。ムーミンはフィンランドの作家で画家のトーヴェ・ヤンソンが、北欧の妖精トロールをヒントに生み出した…

『ガルシア・マルケスひとつ話』書肆マコンド著

『ガルシア・マルケスひとつ話』 書肆マコンド著 エディマン 3,360円 この本は作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの世界を探求したもの。こむずかしい批評ではない。どこから読んでもおもしろいガルシア=マルケス百科だ。 ガルシア=マルケスの小説『百年…

『死の海を泳いで スーザン・ソンタグ最後の日々』デイヴィッド・リーフ著、上岡信雄訳

『死の海を泳いで―スーザン・ソンタグ最期の日々』 デイヴィッド・リーフ著 上岡信雄訳 岩波書店、1,890円 スーザン・ソンタグはアメリカで批評、小説、エッセイなど幅広く輝かしい活躍をした。代表作に『隠喩としての病い』『写真論』『他者の苦痛へのまな…

『ソングライン』ブルース・チャトウィン著、北田絵里子訳、石川直樹 写真・解説

『ソングライン (series on the move) (series on the move)』 ブルース・チャトウィン著 北田絵里子訳 石川直樹 写真・解説 英治出版、2,940円 これは旅の本。観光や計画的な旅行の本ではない。旅する人生についての本だ。 著者ブルース・チャトウィンはイ…

『根をもつこと』シモーヌ・ヴェーユ著、山崎庸一郎訳

『根をもつこと』 シモーヌ・ヴェーユ著 山崎庸一郎訳 春秋社 2,625円 この本『根をもつこと』は『シモーヌ・ヴェーユ著作集』の第5巻を新装版にしたもの。長い間入手が困難だった。 シモーヌ・ヴェーユはフランスの思想家。日本語では「ヴェイユ」と表記さ…

『アラブ、祈りとしての文学』岡 真理著

『アラブ、祈りとしての文学』 岡 真理著 みすず書房 2,940円 かつてサルトルは、アフリカで子どもたちが飢えて死んでいるのに文学は何ができるか、と問うた。現代アラブ文学の研究者である著者、岡真理もこの問いに直面している。パレスチナでパレスチナ人…

『『話の話』の話 アニメーターの旅 ユーリー・ノルシュテイン』クレア・キッソン著、小原信利訳、ユーリー・ノルシュテイン跋

『『話の話』の話―アニメーターの旅 ユーリー・ノルシュテイン』 クレア・キッソン著、小原信利訳 ユーリー・ノルシュテイン跋 未知谷、3,150円 膨大な数の絵によって、絵を動いているように見せる「動画」すなわち「アニメーション」。その動く絵を描く人を…