本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ沢渡 曜の書評ブログ

書籍・雑誌

『緑衣の女』アーナルデュル・インドリダソン 著 / 柳沢 由実子 訳

『緑衣の女』 アーナルデュル・インドリダソン 著 柳沢由実子 訳 東京創元社 1,890円 北欧アイスランド、首都レイキャヴィーク郊外の新興住宅地。子どもが建設現場で拾った石は人の骨だった。こんなショッキングな出だしで物語は始まる。この本はアイスラン…

『アイルランドモノ語り』栩木 伸明 著

『アイルランドモノ語り』 栩木伸明 著 みすず書房 3,780円 アイルランドと言えば、アメリカのケネディ家の父祖の地。少しむかしではジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の映画『静かなる男』で田舎のお人好しな人々があたたかく描かれ、現在では民…

『本の未来』 富田倫生 著

『本の未来』 富田倫生 著 BinB store 無料 電子書籍が華々しく宣伝されているが、肝心の書籍の中身、紙の本から文章をパソコンや電子書籍リーダーに読み込めるようにしたテキストデータがまだ少ない。 青空文庫は著作権が切れたり著者の許諾を得た本をテキ…

『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』 宮田 昇 著

『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』宮田 昇 著みすず書房2,310円 退職後、若いころ味わった読書の楽しみを思い出し、近所の図書館に通うようになった年配者は多い。この本の著者、宮田昇氏もその一人だ。だが宮田氏はただの読書好きではない。編集…

『歴史が後ずさりするとき 熱い戦争とメディア』ウンベルト・エーコ 著、リッカルド・アマデイ 訳

『歴史が後ずさりするとき 熱い戦争とメディア』ウンベルト・エーコ 著リッカルド・アマデイ 訳岩波書店 3,045円 哲学者、中世研究者および著書『薔薇の名前』で有名な小説家でもあるウンベルト・エーコ。この本は彼が2000年から2005年にイタリアの雑誌に連…

『書店の棚 本の気配』 佐野 衛

『書店の棚 本の気配』 佐野 衛亜紀書房 1,680円 書店に入る。目にとまった本を開いて、数行読む。頭のなかに文章が描写する風景、人物、理論が起ちあがる。本から目を離して、棚の、その本のあったあたりを見渡す。たくさんの本のタイトルが頭のなかでつな…

『死と滅亡のパンセ』 辺見 庸 著

『死と滅亡のパンセ』 辺見 庸 著毎日新聞社1,365円 東日本大震災のあと、ジャーナリストで小説家、詩人でもある辺見庸氏は、故郷の宮城県石巻市に立ちつくした。手に取るようによく知っていた町がなにもない。友人たちはどうなったのか。瓦礫の中に、墓から…

『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』 デヴィッド・ハジュー 著 / 小野 耕世 / 中山 ゆかり 訳

『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』デヴィッド・ハジュー 著小野 耕世 / 中山 ゆかり 訳岩波書店5,040円 今、アメリカの映画ではバットマンなどアメリカンコミックから生まれたヒーローが活躍している。キッチュだけどかっこいいヒ…

『東アジアの記憶の場』板垣 竜太 / 鄭 智泳 / 岩崎 稔 編著

『東アジアの記憶の場』板垣 竜太 / 鄭 智泳 / 岩崎 稔 編著河出書房新社4,410円 東アジアの国々、日本、韓国、北朝鮮、中国、台湾は古代から現在まで互いに影響しあい、交戦し、文化を交流してきた。この本では、国の歴史で扱えない東アジアで共有する文化…

『「本屋」は死なない』石橋毅史 著

『「本屋」は死なない』石橋毅史 著新潮社1,785円 「情熱を捨てられずに始める小さな本屋。それが全国に千店できたら、世の中は変わる。」 これが、書店ひぐらし文庫店主、原田真弓が開店にあたって抱いた思いだった。渋谷にある大手書店の売り場担当を辞め…

『いまファンタジーにできること』アーシュラ・K・ル=グウィン 著、谷垣 暁美 訳

『いまファンタジーにできること』アーシュラ・K・ル=グウィン 著谷垣 暁美 訳河出書房新社2,100円 現在ファンタジーと呼ばれる物語は、かつては神話や昔話であり誰もが聞いて育ったものだった。そこから小説が生まれたのだが、近代、小説は現実の人間を描…

『越境する書物 変容する読書環境のなかで』 和田 敦彦 著

『越境する書物 変容する読書環境のなかで』和田 敦彦 著新曜社 4,515円 そこに本がある、というのはどういうことだろうか。その本はいつ、誰によって、どうやってもたらされたのか。本がある、ということは、購入する理由があり、資金の流れがあり、書物を…

『北の島 グリーンランド / 南の島 カピンガマランギ』長倉 洋海 著

<!-- /* Font Definitions */ @font-face {font-family:"MS 明朝"; panose-1:2 2 6 9 4 2 5 8 3 4; mso-font-charset:78; mso-generic-font-family:auto; mso-font-pitch:variable; mso-font-signature:1 0 16778247…

『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』ダグラス・アダムス / マーク・カーワディン 著、安原 和見 訳

『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』ダグラス・アダムス / マーク・カーワディン 著安原 和見 訳みすず書房3,150円 「絶滅危惧種をとりまく状況は最初から、身もふたもなく絶望的」。 銀河をヒッチハイクしてまわる異星人と最後の地球人の…

『乾燥標本収蔵1号室 大英自然史博物館 迷宮への招待』リチャード・フォーティ 著、渡辺 政隆/野中 香方子 訳

『乾燥標本収蔵1号室 大英自然史博物館 迷宮への招待』リチャード・フォーティ 著渡辺 政隆 / 野中 香方子 訳NHK出版2,625円 自然史博物館に行ったことがある人は多くても、その裏側へ入った人は少ないだろう。そこは迷宮で、たくさんの謎の物体と、それを…

『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス 著、安原 和見 訳

『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス 著、安原 和見 訳河出書房新社 683円 「星図にも載っていない辺鄙な宙域のはるか奥地、銀河の西の渦状腕の地味な端っこに、なんのへんてつもない小さな黄色い太陽がある。この太陽のまわりを、 だいたい1億5…

『王のパティシエ ストレールが語るお菓子の歴史』ピエール・リエナール/フランソワ・デュトワ/クレール・オーゲル 著、大森由紀子 監修、塩谷祐人 訳

『王のパティシエ ストレールが語るお菓子の歴史』ピエール・リエナール/フランソワ・デュトワ/クレール・オーゲル 著大森由紀子 監修、塩谷祐人 訳 白水社 2,310円 美食家というのは、おいしいものを食べて育った人が多いような気がする。この本の語り手…

『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』津野 海太郎 著

『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』津野 海太郎 著国書刊行会1,890円 今の子どもや若者は本を読まなくなった、という。たいがいの町には書店も図書館もある。インターネットで注文することもできる。だが出版社や書店の売り上げは下がり続け…

『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』サーシャ・スタニシチ 著、浅井 晶子 訳

『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』サーシャ・スタニシチ 著浅井 晶子 訳白水社2,835円 1991年から2000年まで続いたのユーゴスラヴィア紛争。そのなかのボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争。著者、サーシャ・スタニシチは当時ボスニア・ヘルツェゴヴ…

『エル・ネグロと僕 剥製にされたある男の物語』フランク・ヴェスターマン 著、下村 由一 訳

『エル・ネグロと僕 剥製にされたある男の物語』フランク・ヴェスターマン 著下村 由一 訳大月書店2,520円 オランダのフリージャーナリスト、フランク・ヴェスターマンは1983年当時大学生。スペインを旅行していた。が、カタロニア地方の博物館であるものを…

『バウドリーノ』上・下、ウンベルト・エーコ 著、堤 康徳 訳

『バウドリーノ』上・下ウンベルト・エーコ 著堤 康徳 訳岩波書店各巻1,995円 小説『薔薇の名前』で世に名を知らしめた記号学者、小説家ウンベルト・エーコの邦訳最新小説。中世ヨーロッパを舞台に史実と幻想が踊る冒険物語。かんたんに言ってしまえばホラ話…

『私のフォト・ジャーナリズム 戦争から人間へ』長倉洋海 著

『私のフォト・ジャーナリズム 戦争から人間へ』 長倉洋海 著 平凡社 945円 フォト・ジャーナリスト長倉洋海氏の写真は人々の笑顔であふれている。世界各国の戦火や貧困に苦しむ人々も笑顔なのだ。なぜ長倉氏は苦しんでいる人の笑顔を撮ることができるのか…

『隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民』上橋菜穂子 著

『隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)』 上橋菜穂子 著 筑摩書房 735円 オーストラリア先住民族、アボリジニ(英語で「原住民」という意味)と呼ばれる人々は、現在オーストラリア人口の2パーセントだけだ。かつて600以上の地域集団と200以…

『寡黙なる巨人』多田富雄 著

『寡黙なる巨人 (集英社文庫)』 多田富雄著 集英社 単行本 1,575円 今年4月、免疫学の権威、多田富雄氏が前立腺がんで亡くなった。享年76歳。 実は多田氏は前に1回「死んで」いる。2001年、脳梗塞で倒れたのだ。死の国を数日さまよったあげく、目を覚ました…

『巡礼コメディ日記 僕のサンティアゴ巡礼の道』

『巡礼コメディ旅日記――僕のサンティアゴ巡礼の道』 ハーペイ・カーケリング 著 猪俣和夫 訳 みすず書房 2,730円 ハーペイ・カーケリングはドイツのコメディアン。40代も近づき、病気もするようになってきた。そのときふと思ったのは「神様っているのかな」…

『カントリー・オブ・マイ・スカル 南アフリカ真実和解委員会〈虹の国〉の苦悩』アンキー・クロッホ著、山下渉登 訳、峯 陽一 解説

『カントリー・オブ・マイ・スカル―南アフリカ真実和解委員会“虹の国”の苦悩』 アンキー・クロッホ著 山下渉登 訳、峯 陽一 解説 現代企画室、2,940円 2010年のサッカーワールドカップが南アフリカで開催されたなんて、20年ほど前だったら想像できなかっただ…

『「死の舞踏」への旅 踊る骸骨たちをたずねて』小池寿子 著

『「死の舞踏」への旅―踊る骸骨たちをたずねて』 小池寿子著 中央公論社 2,310円 生きていれば死は日常。滅びは生活の一部。この忘れがちだがあたりまえなことを、人々が常に考えていた時代がヨーロッパにあった。「メメント・モリ(死を思え)」の言葉とと…

『ハーモニー』伊藤 計劃 著

『ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)』 伊藤 計劃 著 早川書房 1,680円 伊藤計劃(いとう けいかく)はSF作家としてわずか1年半ほどしか生きなかった。1974年に生まれ2009年に34歳で肺がんのため亡くなった。残した長編小説は『虐殺器官』(早…

『戦禍のアフガニスタンを犬と歩く』ローリー・スチュワート 著、高月 園子 訳

『戦禍のアフガニスタンを犬と歩く』 ローリー・スチュワート著 高月園子訳 白水社 2,940円 「なぜアフガニスタンを歩いて横断したのかと訊かれても、あまりうまく説明できない。たぶん、それが冒険だから、というのが理由だろう。」とこの本の著者スコット…

『夜』エリ・ヴィーゼル著、村上光彦 訳

『夜』 エリ・ヴィーゼル著 村上光彦訳 みすず書房 2,940円 ナチス・ドイツによるユダヤ人、ロマほかの絶滅のための強制・絶滅収容所、アウシュヴィッツ収容所。ポーランドのオシフィエンチムにかつてあった。数あるナチス・ドイツの収容所のなかでも人類の…