本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

書籍・雑誌

『イスラエル 兵役拒否者からの手紙』ペレツ・キドロン著、田中好子訳

『イスラエル 兵役拒否者からの手紙』 ペレツ・キドロン著 田中好子訳 日本放送出版協会 1,470円 イスラエルでは徴兵制がしかれている。18歳以上の国民は、男性が3年間、女性が1年9ヵ月の兵役につく義務がある。さらに予備役として、男性は45歳になるまで毎…

『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』武邑光裕著

『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』 武邑光裕著 東京大学出版会 3,990円 物語や歌をはじめ、あらゆることはその時代の人々の記憶に残る。そして後の時代の人々に伝えるために記録される。最初、記録は、石や粘土板、木の板などに刻まれた。…

『石神井書林日録』内堀弘著

『石神井書林 日録』 内堀弘著 晶文社 2,100円 本の世界には、普通の明るい書店の本のようにピカピカの本があるばかりではない。年月を経て怪しい雰囲気を醸し出すに至った不思議な本もあるのだ。 「石神井書林」は店舗のない古本屋である。古書目録を顧客に…

『和本入門 千年生きる書物の世界』橋口候之介著

『和本入門 千年生きる書物の世界』 橋口候之介著 平凡社 2,310円 江戸時代、日本の出版文化が花開いた。それまで中国の本の翻訳本が大多数だったのが、江戸時代になると日本人の筆者によるものが増え、仏書、漢籍から庶民の読み物までに広がった。読書が多…

『千の太陽よりも明るく 原爆を造った科学者たち』ロベルト・ユンク著、菊盛英夫訳

『千の太陽よりも明るく―原爆を造った科学者たち (平凡社ライブラリー)』 ロベルト・ユンク著 菊盛英夫訳 平凡社 1,680円 1945年、世界初の核実験の際、原爆研究所所長ロバート・オッペンハイマーは、明るい火の玉が天地をつつんでしまうのではないかと思う…

『アイスランドへの旅』ウィリアム・モリス著、大塚光子訳

『アイスランドへの旅』 ウィリアム・モリス著 大塚光子訳 晶文社 2,520円 この本の著者ウィリアム・モリスは19世紀イギリス文化の巨人である。壁紙や織物の装飾デザイナー、詩人、社会主義運動家で、さらに理想の本を造るために印刷所を設立、現在の造本に…

『活きている文化遺産デルゲパルカン チベット大蔵経木版印刷所の歴史と現在』池田巧、中西純一、山中勝治共著

『活きている文化遺産デルゲパルカン―チベット大蔵経木版印刷所の歴史と現在』 池田巧、中西純一、山中勝治共著 明石書店、3,150円 中国西部の四川省の、さらに西北部、チベット自治区と隣り合うチベット人の多く住む地域、豊かな森林が広がる標高3,220mの山…

『アフガニスタン 山の学校の子どもたち』長倉洋海著

『アフガニスタン 山の学校の子どもたち』 長倉洋海著 偕成社 1,890円 長年、アフガニスタンを撮り続けてきた写真家、長倉洋海氏が山の学校の子どもたちに出会ったのは2002年のことだった。アフガニスタン北部のパンシール、長倉氏の敬愛する北部同盟の指導…

『他者の苦痛へのまなざし』スーザン・ソンタグ著、北條文緒訳

『他者の苦痛へのまなざし』 スーザン・ソンタグ著 北條文緒訳 みすず書房、1,890円 戦争の犠牲者、死体や苦痛にあえぐ傷ついた人々、恐怖と絶望の中にいる人々の写真が、戦争の真実を伝えるためにテレビ、新聞、インターネット、または報道写真展など、いた…

『ヴォイニッチ写本の謎』ゲリー・ケネディ、ロブ・チャーチル共著、松田和也訳

『ヴォイニッチ写本の謎』 ゲリー・ケネディ、ロブ・チャーチル共著 松田和也訳 青土社、2,940円 ある西洋写本がある。わけのわからないものが描かれている。浴槽のようなものに浸かった女性たち、黄道十二宮図らしきもの、植物。だがその植物はよく見るとこ…

『醜い日本の私』中島義道著

『醜い日本の私 (新潮選書)』中島義道著 新潮社1,050円 中島義道。通称「戦う哲学者」。哲学の探究のため、言葉を武器に俗世間と戦い続けている。 この本は以前の著作『うるさい日本の私』の続編である。オビにはでかでかと「『美しい国』が好きなひとには、…

『ブックストア ニューヨークで最も愛された書店』リン・ティルマン著、宮家あゆみ訳

『ブックストア―ニューヨークで最も愛された書店』リン・ティルマン著宮家あゆみ訳晶文社2,625円 いい本と出会うためには、いい書店が欠かせない。あらゆる種類の本がずらりと並んでいる大きな書店がいいわけではない。小さくても、書店スタッフによって選り…

『ムーミンのふたつの顔』冨原眞弓著

『ムーミンのふたつの顔』冨原眞弓著筑摩書房1,575円 ムーミンはカバではない。北欧の昔話に出てくる妖怪「トロール」をもとに、フィンランドの作家で画家でもあるトーベ・ヤンソンが創作したキャラクターだ。素朴なムーミン、冒険好きなムーミンパパ、しっ…

『古書修復の愉しみ』アニー・トレメル・ウィルコックス著、市川恵理訳

『古書修復の愉しみ』 アニー・トレメル・ウィルコックス著市川恵理訳白水社2,520円 壊れた本をどうするか。ページや表紙が破れたり取れたり、しみができたり変色したりした本だ。紙が発明されて以来、本は歴史や物語、公的記録、時には神の言葉を伝える物と…

『アラーの神にもいわれはない ある西アフリカ少年兵の物語』       アマドゥ・クルマ著、真島一郎訳

『アラーの神にもいわれはない―ある西アフリカ少年兵の物語』 アマドゥ・クルマ著 真島一郎訳 人文書院 2,520円 「アラーの神さまだってこの世のことすべてに公平でいらっしゃるいわれはない」が、このタイトルの意味だ。西アフリカの大西洋に面した国、リベ…

『ゆの字ものがたり』田村義也著

『ゆの字ものがたり> 田村義也著 新宿書房 3,150円 「田村義也は、装丁家ではないし、絵かきでも図案家でもない、一個の編集者であるに過ぎない。」作家、安岡章太郎の言葉。 だが、この本の著者、田村義也は一個の編集者としてはあまりある業績を残した。19…