本のいぬ

本のあいだをふらふら歩く、 のらいぬ澤 一澄 (さわ いずみ)の書評ブログ

書籍・雑誌

『Googleとの闘い 文化の多様性を守るために』ジャン-ノエル・ジャンヌネー著、佐々木勉訳

『Googleとの闘い―文化の多様性を守るために』 ジャン-ノエル・ジャンヌネー著 佐々木勉訳 岩波書店、1,680円 フランスの歴史学者にして、前フランス国立図書館長の著者ジャン-ノエル・ジャンヌネーは警告する。2004年、アメリカの世界最大のインターネット…

『ミノタウロス』佐藤亜紀著

『ミノタウロス』 佐藤亜紀著 講談社 1,785円 この本は昨年出版されたもの。私は佐藤亜紀氏のデビュー作『バルタザールの遍歴』のころからのファンだ。出版されるとさっそく買って読み始めた。だが、あまりの、殺す、犯す、殺す、犯す、の連続にぐったりして…

『戦争を記憶する 広島・ホロコーストと現在』藤原帰一著

『戦争を記憶する―広島・ホロコーストと現在 (講談社現代新書)』 藤原帰一著 講談社 714円 さまざまな国やさまざまな人が合意する歴史認識をつくりあげるのは絶望的なほどに困難なことだ。第二次世界大戦については、それぞれが忘れてはいけない記憶として語…

『古本屋を怒らせる方法』林 哲夫著

『古本屋を怒らせる方法』 林 哲夫著 白水社 2,100円 趣味が「古本探し」「古本屋めぐり」というと本好き上級といったところだろう。だが、さらなるつわものの古本好きは古本屋をまわって本を探すだけではない。古本屋から蔵書目録を取り寄せ、各地の古本市…

『ユージン・スミス 楽園へのあゆみ』土方正志著

『ユージン・スミス―楽園へのあゆみ』 土方正志著 偕成社 1,470円 ユージン・スミスは太平洋戦争から日本の水俣公害までさまざまな渦中のなかの人々を写してきたフォト・ジャーナリスト。今も世界の多くの写真家の尊敬を集めている。この本は別冊東北学編集…

『アストリッド・リンドグレーン 愛蔵版アルバム』ヤコブ・フォシェッル監修、石井登志子訳

『アストリッド・リンドグレーン―愛蔵版アルバム』 ヤコブ・フォシェッル監修 石井登志子訳 岩波書店、7,560円 子どものころ、『長くつ下のピッピ』が大好きだった、という人は多いだろう。赤毛でそばかすだらけの世界一強い女の子。ほかスウェーデンの田舎…

『畏れ慄いて 』アメリー・ノートン著、藤田真利子訳

『畏れ慄いて』 アメリー・ノートン著 藤田真利子訳 作品社、1,575円(品切れ) 会社員なら誰でも最初は、会社の掟の不条理に、「どうして?」と思う。だがやがてそれにからめ取られ、そして、からめ取られていることすら忘れてしまう。 その不条理を皮肉と…

『死を生きながら イスラエル1993-2003』デイヴィッド・グロスマン著、二木麻里訳

『死を生きながら イスラエル1993-2003』 デイヴィッド・グロスマン著 二木麻里訳 みすず書房、2,940円 朝、父親が息子を起こすと、訊かれる。「今日のテロってもう、起きたの?」。若いカップルが将来について話し合う。「結婚して3人子どもをもつ。そうし…

『魂との出会い 写真家と社会学者の対話』大石芳野・鶴見和子著

『魂との出会い―写真家と社会学者の対話』 大石芳野・鶴見和子著 藤原書店 3,150円 鶴見和子氏、社会学者。西洋の「対立、伝統の破壊」の社会に対し、アジアの視点からの地域発展論「内発的発展論」で、「共生、伝統の継承」の社会を唱えた。柳田国男や南方…

『琉球布紀行』澤地久枝著

『琉球布紀行』 澤地久枝著 新潮社 2,310円(絶版) 『琉球布紀行 (新潮文庫)』 澤地久枝著 740円 沖縄島を中心として広がる鹿児島県下の島々から台湾近くの島々は、琉球弧と呼ばれる。本土とは違った文化を持つ。この島々にはまた独自の織り、染め、模様の…

『緑の影、白い鯨』レイ・ブラッドベリ著、川本三郎訳

『緑の影、白い鯨』 レイ・ブラッドベリ著 川本三郎訳 筑摩書房、3,675円 1953年、33歳のレイ・ブラッドベリはアイルランドを訪れた。税関で訪問理由を問われると彼は言う。 「狂気です。2種類あります。文学的狂気と心理学的狂気です。まず、私がここに来た…

『アレクセイと泉』本橋成一撮影・著

『アレクセイと泉』 本橋成一撮影・著 小学館、3,570円 1986年にウクライナで起こったチェルノブイリ原発事故では、隣国ベラルーシも放射性物質に汚染され、広い地域が住むには危険な地域になった。たくさんの子供たちが放射能に侵され、死んだ。その地域の…

『書肆アクセスという本屋があった 神保町すずらん通り1976—2007』岡崎武志・柴田信・安部甲 編著

『書肆アクセスという本屋があった―神保町すずらん通り1976-2007 』 岡崎武志・柴田信・安部甲:編著 発行:「書肆アクセスの本」をつくる会、発売:右文書院、1,200円 東京の神田神保町の靖国通りを脇道に入ると、すずらん通りという小ぶりな通りがある。個…

『パレスチナ問題』エドワード・W・サイード著、杉田英明訳

『パレスチナ問題』 エドワード・W・サイード著 杉田英明訳 みすず書房、4,725円 著者エドワード・W・サイード、パレスチナ人。文学研究者、文学批評家。2003年9月、ニューヨークで亡くなった。白血病を患い、長い闘病生活の末のことだった。 サイードはエ…

『デジグラフィ デジタルは写真を殺すのか?』飯沢耕太郎著

『デジグラフィ―デジタルは写真を殺すのか?』 飯沢耕太郎著 中央公論新社 1,575円 最近は、カメラと言えば当然のようにデジタルカメラのことだ。だが、光によって画像をフイルムに焼き付けるアナログカメラの写真と、電気信号によってデジタルデータとして保…

『続和本入門 江戸の本屋と本づくり』橋口候之介著

『和本入門 続 (2)』 橋口候之介著 平凡社 2,310円 本の街神田神保町の老舗、誠心堂書店。創業1935年の和本、古典籍などを扱う古書店だ。店主橋口候之介は、1984年に創業者である岳父のあとを継いで店を取り仕切ってきた。そして前書『和本入門 千年生きる書…

リバーベンドへ

今回、紹介する本『バグダッド・バーニング』(2004年発刊)『いま、イラクを生きる』(2006年発刊)はイラク人女性「リバーベンド」がイラク戦争のさなか2003年からバグダッドで書いたブログを集めたものです。彼女が実在する人かどうかはわかりません。こ…

『父のトランク ノーベル文学賞受賞講演』オルハン・パムク著、和久井路子訳

『父のトランク―ノーベル文学賞受賞講演』 オルハン・パムク著 和久井路子訳 藤原書店、1,890円 ある日、作家オルハン・パムクの仕事場に父がやってきた。父は小さな黒いトランクを持ってきていた。父は言った。「ちょっと見てくれ」とやや恥ずかしそうに「…

『誓いの精神史 中世ヨーロッパの〈ことば〉と〈こころ〉』岩波敦子著

『誓いの精神史 中世ヨーロッパのと (講談社選書メチエ)』 岩波敦子著 講談社(講談社選書メチエ) 、1,575円 西洋世界での声に出して言う「誓い」の言葉というと、日本で一番多く目にするのはキリスト教式結婚式での新郎新婦の誓いだろう。 西洋では、伝統的…

『悪魔に魅入られた本の城』オリヴィエーロ・ディリベルト著、望月紀子訳

『悪魔に魅入られた本の城 (シリーズ愛書・探書・蔵書)』 オリヴィエーロ・ディリベルト著 望月紀子訳 晶文社、1,995円 本を手に入れるのは、実はたいへんなのだ。多種多様な書店がある東京に住んでいるのならいざしらず、ベストセラー以外の本は、地方の近…

『さよなら僕の夏』レイ・ブラッドベリ著、北山克彦訳

『さよなら僕の夏』 レイ・ブラッドベリ著 北山克彦訳 晶文社、1,680円 アメリカ文学の大御所レイ・ブラッドベリ。『華氏四五一度』など詩的な文章で書かれる作品はジャンルの枠を越える。彼は37歳のときの名作『たんぽぽのお酒』の続編を80歳代後半で書いた…

『サイボーグ化する私とネットワーク化する世界』ウィリアム・J・ミッチェル著、渡辺俊訳

『サイボーグ化する私とネットワーク化する世界』 ウィリアム・J・ミッチェル著 渡辺俊訳 NTT出版、3,780円 「サイボーグ」だのいう言葉を見てSF小説だと思う方もいるかもしれないが、そうではない。 マサチューセッツ工科大学教授の著者ミッチェルが…

『古本暮らし』荻原魚雷著

『古本暮らし』 荻原魚雷著 晶文社 1,785円 著者の住んでいる高円寺界隈の中央線沿いは、個性的な古本屋が多い。中央線で古本屋のメッカ神田神保町に向かう。古本屋での心躍る本との出会い。至福の瞬間だ。 「手にとった瞬間、わけもわからずほしくなる。心…

『センセイの書斎』内澤旬子著

『センセイの書斎―イラストルポ「本」のある仕事場』 内澤旬子著 幻戯書房 2,310円 本を置く場所を確保するのは、ふつうの人にはむずかしい。ましてや書斎を持つことなどは夢のような話だ。しかし、この本に出てくる作家、研究者など31人のセンセイたちはそ…

『滝山コミューン一九七四』原武史著

『滝山コミューン一九七四』 原 武史著 講談社、1,785円 1970年代に小学生だった人は、この本に懐かしさと苦さを味わうだろう。 著者原武史は『大正天皇』などの本で知られる政治学者。1974年には東京都東久留米市の滝山にある小学校の6年生だった。これは著…

『われらはみな、アイヒマンの息子』ギュンター・アンダース著、岩淵達治訳

『われらはみな、アイヒマンの息子』 ギュンター・アンダース著 岩淵達治訳 晶文社、1,890円 アドルフ・アイヒマンはナチスドイツのユダヤ人絶滅計画の総責任者だった。戦後アルゼンチンに逃亡し、家族とともに隠れ住んでいた。だがイスラエルの情報機関によ…

『古本道場』角田光代・岡崎武志著

『古本道場』 角田光代・岡崎武志著 ポプラ社 1,470円 「古本屋めぐりが趣味」という人は、たんなる「趣味は読書」な人とは違って、その道の上級者である。古本のなかから、自分にとって価値ある一冊を選び出すのだ。やがて古本の目利きになっていく。 さて…

『ファンタジーと言葉』アーシュラ・K・ル=グウィン著、青木由紀子訳

『ファンタジーと言葉』 アーシュラ・K・ル=グウィン著 青木由紀子訳 岩波書店、2,520円 アーシュラ・K・ル=グウィン。「西の善き魔女」とあだ名される作家。代表作は1968年の発表から今なお読みつがれるシリーズ『ゲド戦記』。SFでの代表作は『闇の左…

『ヨーロッパ 本と書店の物語』小田光雄著

『ヨーロッパ 本と書店の物語 (平凡社新書)』 小田光雄著 平凡社 798円 活版印刷の聖書がドイツ人グーテンベルクによって作られたのが1455年。本はしだいにヨーロッパの民衆に読まれるようになった。スペインの田舎紳士ドン・キホーテが、行商人が売る騎士道…

『本棚の歴史』ヘンリー・ペトロスキー著、池田栄一訳

『本棚の歴史』 ヘンリー・ペトロスキー著 池田栄一訳 白水社、3,150円 自宅で本の置き場に困っている方も多いだろう。「本をどうやって置くか」「限られたスペースに、本を減らさずにどうやって収めるか」。本好きには悩ましい問題だ。 この本は、「本をど…